エネカン通信172号から(03/18)

私の高校時代の友人で、エネルギー節約は最大の資源・幸福の基礎という信念の持ち主の 京都大学名誉教授の新宮秀夫さんが、送ってくださっているエネカン通信から、 今回の原子炉事故についての記事を掲載させていただきます。 今日のエネカン通信は原子炉事故の話ですが、 先ず原子炉の現状についての私見を先に報告します、 素人がベテランに聞いた限りの報告ですから、間違いもあると思って読んでください、また、間違いがあればご指摘をお願いします。 1 原子炉の現状  12日にエネカン集会を開いた前日に、大地震があり、それは大事件でしたが、その後の原発事故が今は最も憂慮すべき事になって来ました。テレビで見ても、楽観的な意見とか報告をしながら、どんどん悪い方向に向かっています。最悪の事態では、そうなるのか、という事こそ我々は知りたい。そうならなければラッキーですが、そんなことはどうでも良いわけです。  エネカン代表の小生は原子炉の専門家に友人が何人かいますので、電話で事態の現状と最悪事態の時どうなるかを聞きまくりました。簡単なまとめ、を報告します。聞いたことなので、自分でも本当にそうなのか判断できませんが。でも、テレビより私はこちらを信じています。  先ず、今、事故になっている、いわゆる軽水炉、ですが、この原理はアメリカ製です。アメリカはこの原理の原子炉を作るに際して、福島のような、水が抜けた状態でどうなるか、などの実験までして、その経験を踏まえて炉を作ったそうです。ですから、アメリカにいろいろ聞くのが賢明な気がしますが、どうなっているのか、救援に来てくれているそうですから、やっているでしょう。日本は設計図だけ貰って“改良”を加えたと言って来ました。  さて、この軽水炉、というのは、いわゆる低濃縮ウランが燃料です。ウランは、天然ものは、核分裂する種類のウランを0.7%しか含んでいません。これを約5%まで濃縮して使用しています。ちなみに、原爆では99%以上に濃縮しているそうです。北朝鮮がやっても中々上手く行ってない様子はそんなに純度高く出来ないのかも知れませんね。そんなに濃縮してしまうと、いわゆる、臨界というウランが一定量あつまると、スゴイ速度で核分裂が進む現象になります。  今事故っている炉のウラン燃料も低濃縮ですから、集まっても、原爆なみの核分裂、それに応じた熱と中性子の短時間大量放射は起こらないそうです。これで安心してはもちろんダメですが、一応の知識としては、意味あるでしょう。  そんな低濃縮ウランが、何故、原子炉の中で燃える(すなわち臨界と呼ばれる核分裂反応の継続状態になる)のか、という点が大切です。5%程ある核分裂するウランは、分裂して放出する中性子が次ぎ次ぎ近隣のウランに当たり、当てられたウランは当てられた中性子以上の量の中性子を出します。これが連鎖反応、つまり臨界を越えたウランの燃え方、です。  しかしながら、ウランが分裂して放出される中性子は、高速中性子と呼ばれるように、速度が速すぎて、近隣のウランに当たってそれらを分裂させるより早く、突き抜けて外に飛び出してしまいます。そうなると、連続的核分裂を維持(臨界に達する)することが出来ません。  そこで、低濃縮でも臨界にしてやる為に、燃料棒の周りを、水、で取り巻いて、一本の燃料棒から出た中性子が水を通っている間に、減速されて、高速でない、熱中性子、という速度の遅い中性子になるように工夫がされているのです。熱中性子は近隣のウランに吸収されて新たな核分裂を起こし易いので、適当な水の量を燃料棒の周りに保つのが、軽水炉のコツらしいです。  では、臨界を止めるにはどうするか、というと、今度は、水より遥かに中性子を吸収、つまり熱中性子の速度どころか、それらをストップさせてしますほど、遮蔽効果の大きい、ホウ素(ボロン)を含む材料を棒にして、核反応を止める為に、燃料棒の間に挿入するのです。制御棒、と言われるのがコレです。今、事故っている原子炉内にホウ酸水を注入しようとしている理由は、ホウ素によって核分裂の継続を止めたい為です。制御棒がなくても、ホウ酸水に取り巻かれた燃料棒は燃料にならないのです。  以上が今小生の頭にある軽水炉の概要です。幸い、地震でも福島の原子炉は制御棒が入って、止まった(臨界を超えていない)状態にあります。では、何故、熱や放射線が、沢山でているのか?が問題になります。  燃料棒は原子炉で燃えるまでは、ウランが自然に出す放射線しか出しません。この量はちょっとで、近づいても恐れる程ではありません。学生の時に東海村を見学に行って、鉱石から製錬された濃縮していない0.7%のウランの大きな塊が置いてあったので、指で触ろうとして、所員に怒鳴られたことを覚えています。  一旦原子炉内で臨界に達して燃料として使われたウランは、しかしながら、核分裂に伴って生成する他種類の放射性の元素を含んでいます。それらに中には気体もあれば、固体もあり、寿命の長い元素も短い元素もあります。これらの放射性元素は寿命が短い物は短時間の寿命の中で精一杯放射線をだすので、非常に危険ですが、あまり寿命が短い物は、あっさりと放射能がなくなるので、かえって無害です。  とっても寿命が長いものは、又、常時出る放射能が少ないですから安全。中間の物、寿命(半減期、つまり放射能が半分に減る時間)が8.1日くらいでベータ線を出す放射性ヨウ素131、とか5.3年で人体に有害なガンマ線をだすコバルト60とか、28.8年でベータ線を出し、人体に取り込まれやすいストロンチウム90やセシウム137(半減期30.1年、ガンマ線)、など厄介な元素があります。  これらの元素が出す放射線は燃料棒の中で吸収される時に熱をだします。ですから、一旦使用した燃料棒は、臨界が止まっても、発熱し続けます。この熱は大変な量ですから、燃料棒を使用途中、あるいは使用が終わって取り出したあとは、深い水の中に付けて冷却しつつ保管しなければなりません。臨界が終わって、取り出してからおよそ10日で発熱量が半分位になる、とベテランから聞きました。しかし、0になるには何万年も掛かるらしいです。  使用ずみ燃料棒は、水の中に保管されていないと、自分の熱で燃料を覆う被覆管の金属を溶かす能力があります。ですから、保管プールの水が減っている現状は怖いです。溶けてプールの底も溶かして下に落ちれば、そのあたりの水と反応して爆発して飛散という事態もあり得ます。 必死になって今、3号炉とか4号炉の燃料保管プールに水を入れようとしているのはその為です。 しかし、TVで知った事はプールの容量は1400トン、掛ける水は1回70トンとかですから、焼け石に水に近い気もします。  炉の中で心配なのは、炉内の水が減って、これも燃料棒の発熱で自ら溶けて下に落ちることです。 高熱になれば炉の圧力容器の底を溶かして炉外に漏れ出す、そして、更に炉の外を覆っている、格納容器の底も溶かして外に出る。という事態も考えられる。そうなるとどうなるか?誰にも分からないそうです。原子炉のことは素人ながら、技術屋の感で言えば、水と接触すれば、これも爆発して飛散、というストーリーがあり得ます。  要点を振り返ると、低濃縮ウランである、燃料棒、その中のウランが、再臨界になって、遮蔽無しの原子炉が大規模発熱を開始する可能性は極めて低い。さらには、原子爆弾が野ざらしで爆発、という事にはならない。らしいです。これは原理的にならないということですから、最低の安心感がもてるでしょう。 今、一番怖いのは、使用済み燃料棒が溶けて、プールのそとに出て、水と反応して爆発飛散する、というストーリーのようです。どんな規模の爆発で、何処まで燃料棒の中身が飛ぶか、はだれも分からない、という説明?は分かります。最大の爆発でも、その規模は爆発としては,大したことは無いでしょうが、空気中に飛散する放射性物質の放射能が大きいですから、この飛散範囲では大変である事が想像できます。半径30キロとか、80キロ以内は待避とか、言われるのはこの理由からでしょう。それと、遠くても(東京まで200数10キロ)、風下なら局所的に,高レベルの放射線が一時的に観測されるかも知れません。  以上が聞きかじりで、原子炉については門外漢の小生が得た原子炉事故の現状です。間違いはあると 思いますが、TVや新聞に書いてない知りたい事を、ベテランから聞き出して理解した限りを書きました。  責任を負うべき人達の後手後手、と、危機感の欠如には、腹も立てる気がしませんが、それにいくら文句を言っても仕方ないので、ここには書きません。インターネットに沢山書かれています。  炉の設計にしても、放射能が強いので、すくなくとも300年間は地下300メートルに埋めて水をかけつつ監視する、と自ら新聞に書いていた使用済み燃料を、原子炉の建屋の4階に1400トンのプールを作って、一時保管している、とは呆れるより仕方有りません。屋上のプールなんて底が抜けたらどうするの、と設計時点で誰も考え無かったのですね。きっと経済性優先でしょう。  TVで見る責任者達の会見や発表は、多くがまるで、太平洋戦争時の「大本営発表」のようです。小学2年生でラジオから毎日聞かされた大本営発表では、戦果が毎日挙がって日本が勝っていたのですが、その結果が広島、長崎の原爆でした。  今、現場にいて命がけで水を掛けている人達は、まるで前線で命を賭けて戦った徴兵された兵士を彷彿とさせます。先ずトップが命がけにならねばなりません。  アメリカとの戦争なら、敗戦で終わりですが、原子炉事故は何世代にも影響が続きます。原子炉事故の現況は正に、未曾有の戦争だ、という覚悟、姿勢、行動で臨まねばなりません。  最後に言いたいことは、腰抜け連中のおかげで最悪の事態になりつつあるのは、ムカつきますが、連中に良い思いをさせて原子炉を沢山作った責任は、我々電気を1ワットでも使った全員にあると思います。「倹約と幸福」第3話、に書いたように、安い電気代を望んだツケが,事故である、と認識しなければなりません。1ワットでも倹約すれば、それだけ事故の元である原子炉は減らせるのです。  さらに、今、急に原子炉はイヤだ~と合唱が世界中で始まりそうな、情勢になってきましたが、では、電気はどうするの?という答えと合わせて考える人は少ないです。石炭、石油に頼るなら、今度は、ひょっとすると放射能より怖い炭酸ガスを出し放題になるかも知れません。50年間に炭酸ガス濃度が20%以上増えたのは事実です。後に書いたエントロピ-にも関係ありますが、炭酸ガスの{効果}は増加した絶対量が50ppm(0.005%)だから少ない効果ではなくて、濃度が20%増えたという濃度の割合の変化こそ恐ろしいのです。  これを、人間の活動の為あるか、無いか、不毛の議論が学会誌にまで載っています。「倹約と幸福」第11話に書いたパスカルの賭を考えて下さい。人類が急激な気候変動で滅んでその原因が結局は人間の活動の為であったとしたら、シカタガナイ、では済みません。  原子炉事故の後始末に何兆円もかかるでしょうが、それは全部電気代に加算して我々が払う必要があります。結局、原子炉による電気は高くつくのです。化石燃料による電気代も、もっと高くつくのかも知れません。  答えは唯一つ、高い燃料代を払うのがイヤなら倹約するしかない。これです。自然エネルギーは、原子炉の電気代の10倍近くする、なんて言われてイヤがらて来ましたが、ダムが決壊しても復興できますが、放射線で汚染された土地は再利用には時間を待つ(何十年、何百年?)より仕方ないんですね。  安藤昌益の「自然真営道」は今日のこの事態を予測していたように思えて来ました。